勝ち誇るアモールについて

身の回りの環境が一新したため、中断していたのですが、お客さんも増えたので再開します。

日本にいるので題名も変えました。

勝ち誇るアモールは、心の師匠カラバッジョの作品です。

アモールはエロスの神、キューピッドと同意で、足元に散乱している書物、月桂冠、甲冑、楽器が
愛は芸術、学問、名声、武力、権力に勝ることをあらわしているといわれているのだけれど、
そこまでは大胆なおかつ素敵な話なんだけれど

この天使の疲れた表情、目の下のしわ、微妙に若くない体つき
まったく聖なるものじゃない感じとか
完璧だなあと思います。淫靡ですこし退廃的なところも面白い。
中世の宗教画に出てくる天使は、もうちょっと「純潔な美しさ」であってもいいはずなんだけど。

16世紀カトリック教会がルターに糾弾され、宗教改革によって特権的地位からひきずりおろされてしまう
時に、文字の読めない民衆に対して、わかりやすく劇的な宗教芸術で彼らを感動させることによって
カトリック教会の威信を取り戻そうとしていたときがカラバッジョの生きた時代といわれています。

カラバッジョは天才画家として革命をもたらしたといわれ
デルモンテ枢機卿パトロンにもち、レオナルドダビンチも宮仕えしていた
名門貴族の家に支えられたり、画家として非の打ち所の無いエリートなんですが

カトリック教会が神への信仰をうながそうとしてるときに
この絵を描いてるんですよね。

他にも娼婦をモデルにして聖母を書いたり、喧嘩ばかりして殺人を犯し指名手配をうけ
南イタリアを逃げ回っていた時期もあるそうです。

イタリアがリラの時代に、紙幣の顔になってたこともあるんですが
犯罪をかさね、放蕩息子のカラバッジョをイタリア人は誇りにしているなあ
という印象を受けます。犯罪者を紙幣にすることってあんまり想像できないきがするのに。

最期は、指名手配中に教皇の恩赦を受け念願のローマに帰る船で亡くなってしまいます。

カラバッジョは画家が権力者に仕えることでしか成立しなかった時代に
自分の信義を通してしまった人という気がします。激情的な人いわれていますが
感情が大きすぎて、怒りも悲しみも喜びも愛に対する熱意も人一倍だったのかもしれません。

カラバッジョの人生に対する真剣さに襟を正しつつ、
やっぱりこの絵のセンス!エッビーバ(万歳)!

追記
この写真だと、キューピッドの疲れ気味な感じが伝わって無いって気づきました。もっと大きい画像でみてみてください。なんか面白いから。