文学部としてのアドバンテージ

*advantage -1優位、優勢、有利
2、利点、利益、恩恵、効果、特典
3割引、値引き 4立場を有利にするもの


就職活動中、文学部はふと気づく。
私たちの良さってなんなんだろう?


法律学部ー法律系、良い企業
経済学部ーすべての企業
理系ー理系の良い企業


周りが続々となんだか安定した良い企業に就職を決める中
文学部はふと立ち戻る。
私たちができることと、期待されていることって何だったんだろう。
編集部で働くとか以外に、できることはなかったってことなんですかね。
なんだか狭くなった肩身で、よくよく必死に考える。


中には毒づく人もいて
文学部に入った時点で社会からは少し外れてしまうんだ。
俺たちは馬鹿な決断しちゃったよ。
灰色の現実に、みんなを一気に引きずり込む。


未熟でぶざまで何にもなくて、社会に生きる明確な技術のない自分たちが
息苦しくて切なかった。
あんなに晴れ晴れしく大学に受かったことを喜んだ自分たちの頭の悪さを、
忌々しく思うときがくるなんて。


それから何年かすぎて、その頃の思いを思い出した。
結局文学部の意義って何なんだったんだろう?


人生を生きる根っこの価値観が
物語だったり人の心だったりするんじゃないかな、とある人に言われたことがある。


なにか大変なことがおこったときも、夢のようなことがおこったときも
長い物語の一場面でしかないことに気づいていることが、私たちの強みなんじゃないかと。
そんなことで人生は計れないし、終わらない。
一緒に泣いたり喜んだりすることができても
その人自身の価値がそれで決まってしまうということはない。


すごく単純に言ってしまえば
「経済」や「法律」やわかりやすい基準ではなく、「物語」を基準にしてしまっているのが
文学部の良さなんじゃないかな。と。
社会で計りやすい価値観だけを信じて、生きる必要がないことを知っているということ。


大学に行かなくても豊かな人生は手に入ること

不倫と言われる恋愛が生産的でないように見えても
理屈じゃ片付かない人の心こそ本物であったりすること。

30過ぎの大失恋が、実はその後の人生の心強い羅針盤になることもあったり

自分自身の人生を創造的に進むことの方が、
分かりやすい大通りを踏み外さずに歩くことより
ずっと人間らしい冒険をすることができることとか



そんなことをすんなり真実だと信じていたりする。
わりきれないものの中にある本当を、理由もなく信じ込んでいた。
その主人公らしさこそが、何にも代わらない答えだと思っていた気がする。


最近ふと、文学部のよさはそこにあったのだなと思える。


社会に出て、ビジネス本に出てくる成功テクニックを後生大事に生きている人にも
たくさん会ったけど、自分の好きな小説を大事に一冊読んだ方が
よっぽど良い仕事ができるようになりそうなのにと思うこともあった。
仕事相手はいつも人間で人間には心があるし、テクニックでは動かない割り切れなさがあることを
少なくとも文学部は理解できるのではないかと思う。